医療費控除は年末調整では受けられない。会社員でも確定申告で申告して、はじめて所得税の計算に入る。控除額は「支払った医療費 − 保険金などで補てんされる金額 − 足切り額」で、足切り額は10万円が基準だが、その年の総所得金額等が200万円未満の人は総所得金額等の5%になる。マイナスなら0円、上限は2,000,000円だ。
当サイトが2026年度の条件(東京都・35歳・扶養0人・給与収入のみ・補てん0円)で試算すると、年収250万円の人は総所得金額等が1,670,000円なので足切りは83,500円、年収600万円の人は4,360,000円なので100,000円になる。医療費10万円を払った場合、年収250万円では控除額16,500円・所得税が817円減り、年収600万円では控除額0円で所得税は変わらない。
足切りの額を決める「総所得金額等」
足切りが10万円か5%かは、年収そのものではなく総所得金額等で判定する。この試算は給与収入だけを扱うため、総所得金額等を給与所得、つまり年収から給与所得控除を引いた額に置いている。年収250万円なら1,670,000円で200万円未満、5%は83,500円だ。年収600万円なら4,360,000円で200万円以上なので、10万円のほうが使われる。
副業や不動産、譲渡などの所得もある人は、総所得金額等がこの給与所得だけの試算とは異なる場合がある。給与だけなら200万円未満に収まる人でも、ほかの所得を足すと判定が変わりうる。表の境目は、給与収入だけの人の数字として読む必要がある。
年収250万円で医療費を並べた試算
| 支払った医療費 | 医療費控除額 | 所得税が減る額 |
|---|
| 50,000円 | 0円 | 0円 |
| 80,000円 | 0円 | 0円 |
| 100,000円 | 16,500円 | 817円 |
| 150,000円 | 66,500円 | 3,370円 |
| 200,000円 | 116,500円 | 5,922円 |
| 300,000円 | 216,500円 | 11,027円 |
| 500,000円 | 416,500円 | 14,090円 |
出典:当サイトの手取り計算ツールによる2026年度の試算(年収250万円・東京都・35歳・扶養0人・補てん0円、復興特別所得税2.1%を含む)。控除額の式は国税庁タックスアンサーNo.1120による
50,000円と80,000円は83,500円を超えないので、控除額は0円になる。この境目より下では医療費を払っても所得税は動かない。
500,000円の行は読み方に注意がいる。控除額416,500円は控除前の課税所得276,000円を上回り、控除後の課税所得は0円になっている。課税所得は0円より下がらないため、この条件で所得税が減る額は14,090円にとどまる。控除額が大きくても、差し引く相手の課税所得が小さければ効き目はそこまでだ。
年収600万円で同じ表を作ると
| 支払った医療費 | 医療費控除額 | 所得税が減る額 |
|---|
| 100,000円 | 0円 | 0円 |
| 150,000円 | 50,000円 | 5,105円 |
| 200,000円 | 100,000円 | 10,210円 |
| 300,000円 | 200,000円 | 20,420円 |
| 500,000円 | 400,000円 | 40,840円 |
| 1,000,000円 | 900,000円 | 70,857円 |
出典:当サイトの手取り計算ツールによる2026年度の試算(年収600万円・東京都・35歳・扶養0人・補てん0円、復興特別所得税2.1%を含む)。50,000円・80,000円の行も控除額0円・所得税が減る額0円
こちらは10万円ちょうどまで控除額が0円だ。150,000円から500,000円までは、控除額が倍になると所得税が減る額もほぼ倍になる(控除額200,000円で20,420円、控除額400,000円で40,840円)。医療費1,000,000円では控除額900,000円に対して70,857円で、控除額に対する割合は約7.9%と、それまでの約10.2%より小さい。控除後の課税所得は1,538,000円まで下がっている。
同じ150,000円でも、控除額と減る税額の大小が入れ替わる
二つの表を並べると、医療費150,000円の行で向きが逆になる。年収250万円の控除額は66,500円で、年収600万円の50,000円より大きい。ところが所得税が減る額は、年収250万円が3,370円、年収600万円が5,105円で、600万円のほうが大きい。
控除額の大きさだけを見て「どれだけ戻るか」を考えると、この差を見落とす。上の二つの条件では、足切りが低いのは年収250万円の側だが、所得税の減り方が大きいのは年収600万円の側だった。
表の数字と、実際に戻るお金の違い
表が示すのは所得税が減る額で、還付される金額そのものではない。実際に戻る額は、確定申告で源泉徴収票の「源泉徴収税額」と精算した結果で決まる。年末調整の仕組みは年末調整と源泉徴収税額の計算で扱っている。
医療費控除が住民税にも反映される場合、確定申告をした年に現金で戻る形ではなく、翌年度の住民税額が下がる形になる。この試算には住民税の分は入っていない。通院の交通費や市販薬、健康診断などが控除の対象になるかの判定も、ここでは扱っていない。
ふるさと納税をしている人が医療費控除のために確定申告をする年は、寄附も申告に含める必要がある。その点は2026年分のふるさと納税と医療費控除の申告にまとめた。自分の年収での手取りは、当サイトの手取り計算ツールで条件を変えて確かめられる。