毎月の給与から引かれる所得税は、その時点の見込みで出した概算だ。その年の給与が確定したあと、年末調整で正しい税額を出し直し、差額を精算する。東京都・35歳・扶養0人・協会けんぽ・賞与なしで、生命保険料控除などを何も申告しない年収500万円の場合、2026年分の試算では12か月分の源泉徴収が145,680円、年間の所得税が91,686円。差の53,994円が、年末調整で戻る目安になる。
食い違いの中心は基礎控除だ。この試算の毎月の源泉徴収は、基礎控除を月48,334円(年に直すと580,008円)として計算している。年末調整では合計所得に応じた基礎控除1,040,000円で計算し直すので、年末に出す税額のほうが小さくなる。
年収ごとの「概算」と「確定額」
同じ前提(東京都・35歳・扶養0人・協会けんぽ・賞与なし・申告する控除なし)で、年収を変えて並べた。
| 年収 | 源泉徴収12か月分 → 年間の所得税 | 精算の目安 |
|---|
| 300万円 | 57,120円 → 26,648円 | +30,472円 |
| 400万円 | 87,840円 → 57,227円 | +30,613円 |
| 500万円 | 145,680円 → 91,686円 | +53,994円 |
| 700万円 | 328,920円 → 276,181円 | +52,739円 |
| 1,000万円 | 830,400円 → 822,211円 | +8,189円 |
出典:LifeKurabe 手取り計算ツールの2026年度算出結果(確認日2026年9月1日。国税庁タックスアンサー No.2260・No.1410・No.1199、協会けんぽ・日本年金機構・厚生労働省の2026年度料率をもとに算出)
どの年収でも、この前提では毎月の源泉徴収の合計が年税額を上回り、年末に戻る側になる。ただし戻る額は年収に比例しない。300万円と400万円はどちらも3万円台、500万円と700万円は5万円台で、1,000万円では8,189円にとどまる。月々いくら引かれているかは、年税額の大きさを測る物差しにはならない。
500万円の53,994円はどこから来るか
年末調整で基礎控除が580,008円から1,040,000円に置き換わると、課税所得は459,992円下がる。毎月の計算と年末の計算では給与所得控除にも144,624円の差があり、これも同じ向きに効く。合わせて604,616円の課税所得が、毎月の計算では余分に数えられていたことになる。この差にかかっていた所得税が53,909円だ。
表の53,994円とは85円ずれる。毎月の税額を10円単位で四捨五入していることと、月額表の税額の式が速算表を12か月で割った形になっていることから出る端数だ。
もう一つ注意がある。この年収では、課税所得の差が速算表の段をまたぐ。そのため「604,616円 × 5%」と一律に掛けても53,909円にはならず、段ごとに分けて計算する必要がある。速算表の段と実際の負担率の関係は、年収別の所得税負担率の記事で並べている。
給与明細と数円合わないのは計算方法の違い
上の表の毎月の源泉徴収は、国税庁「月額表の甲欄を適用する給与等に対する税額の電算機計算の特例」(財務省告示)の式で出している。紙の税額表とは必ずしも一致しない。税額表は給与の階級ごとの中間値で計算されていて、扶養7人超の扱いや74万円超の調整も異なるからだ。その差異も年末調整で精算される。
このため、表の「精算の目安」は目安でしかない。実際に戻る額は「その年の正しい所得税」と「毎月源泉徴収された額の合計」の差で決まり、後者は勤務先が使う月額表で決まる。手元で確かめるなら、源泉徴収票の「源泉徴収税額」と照らすことになる。
控除を申告すると、確定額のほうが下がる
年末調整で生命保険料控除やiDeCoなど、課税所得から差し引く控除を申告すると、課税所得がさらに下がる。毎月の源泉徴収額が同じなら、年税額が小さくなった分だけ精算額は戻る側に動く。住宅ローン控除は税額控除で、課税所得を下げる控除ではないため、以下の表の計算は当てはめない。
年収500万円(同じ前提)の課税所得は1,796,000円で、速算表の税率は5%。控除は1,000円未満を切り捨てる前の額から引き、引いたあとで切り捨てる。復興特別所得税(2.1%)を含めた所得税の下がり方は次のとおり。
| 申告する控除額 | 控除後の所得税 | 所得税が減る額 |
|---|
| 20,000円 | 90,665円 | 1,021円 |
| 50,000円 | 89,133円 | 2,553円 |
| 100,000円 | 86,581円 | 5,105円 |
| 200,000円 | 81,476円 | 10,210円 |
| 400,000円 | 71,266円 | 20,420円 |
| 800,000円 | 50,846円 | 40,840円 |
出典:LifeKurabe 手取り計算ツールの2026年度算出結果(確認日2026年9月1日、控除前の所得税は91,686円)
この範囲では、80万円の控除を申告しても税率の段は5%のままで、課税所得も0円まで届かない。だから減る額は控除額のおおむね5.1%になる。5%に復興特別所得税の2.1%を上乗せすると5% × 1.021 = 5.105%で、100,000円なら5,105円と表の値に一致する。課税所得が別の段にある年収では、この率は当てはまらない。
控除は住民税にも効くが、年末調整で戻るのは所得税だけだ。住民税は翌年度の税額が下がる形で反映され、控除額も所得税と同じとは限らない。社会保険料、所得税、住民税がどの順に引かれて手取りが決まるかは、手取りは五段階の順に決まるにまとめている。
この目安から外れる人
表の金額は「年収を全額月給で受け取り、年の途中で給与額が変わらない」人を前提にしている。次の場合は合わない。
- 賞与がある。賞与の源泉徴収は「賞与に対する源泉徴収税額の算出率の表」で決まり、この計算には入っていない
- 毎月の給与額が年の途中で変わった
- 組合健保や共済組合に加入している、または組合費・財形・社宅など会社ごとの控除がある
こうした条件では、毎月の源泉徴収の合計が年税額に届かず、年末調整で足りない分を追加で引かれることもある。戻るか引かれるかは、源泉徴収の合計と確定した年税額のどちらが大きいかで決まる。