年末調整で申告する生命保険料控除額は、そのまま所得税から差し引かれるわけではない。控除は給与所得から引かれて課税所得を小さくし、その課税所得に速算表の税率をかけ直した結果として所得税が下がる。当サイトの手取り計算(2026年度、確認日2026年9月1日)で、年収500万円・東京都・35歳・扶養なし・協会けんぽの人を試算した。各区分で計算した生命保険料控除額の合計が120,000円なら、所得税(復興特別所得税を含む)は91,686円から85,560円になり、6,126円減る。
この人の課税所得は控除を申告する前で1,796,000円で、速算表の税率は5%の段にある。復興特別所得税2.1%を含めると、控除額に対して減る所得税の割合は5%×1.021=5.105%になる。120,000円×5.105%が6,126円だ。12万円の控除が12万円の還付になるわけではなく、減る所得税は課税所得の税率と控除額で決まる。
課税所得は給与所得から三つの控除を引いて決まる
保険料控除がどこに効くかを見るには、申告前の課税所得がどこにあるかを先に確かめる必要がある。年収500万円の例では、額面から給与所得控除を引いて給与所得を出し、そこから社会保険料控除と基礎控除を引いている。
| 項目 | 金額 |
|---|
| 年収(額面) | 5,000,000円 |
| 給与所得控除 | 1,440,000円 |
| 給与所得 | 3,560,000円 |
| 社会保険料控除(健康保険・厚生年金・雇用保険など) | 723,148円 |
| 基礎控除(所得税) | 1,040,000円 |
| 課税所得(1,000円未満切り捨て) | 1,796,000円 |
| 所得税(復興特別所得税を含む) | 91,686円 |
出典:LifeKurabe 手取り計算ツールの2026年度算出結果(確認日2026年9月1日)。年収500万円・東京都・35歳・扶養0人・協会けんぽの条件
社会保険料723,148円は、毎月の給与から天引きされている健康保険料242,310円、子ども・子育て支援金5,658円、厚生年金保険料450,180円、雇用保険料25,000円の合計だ(35歳なので介護保険料は0円)。年末調整で申告する生命保険料控除や地震保険料控除は、この流れの「控除」の列に加わり、課税所得をさらに押し下げる。計算の順序が細かいので、手取りが決まる順番全体は手取りの五段階の記事で追える。
生命保険料控除4万〜12万円で所得税はいくら下がるか
同じ年収500万円の人について、生命保険料控除の各区分を合計した額が4万・8万・12万円になった場合の所得税の差を並べた。控除は課税所得の1,000円未満を切り捨てる前に引き、引いたあとで切り捨てている。各区分での支払保険料から控除額への換算は別途必要だ。
| 生命保険料控除の合計額 | 控除後の課税所得 | 所得税が減る額 |
|---|
| 40,000円 | 1,756,000円 | 2,042円 |
| 80,000円 | 1,716,000円 | 4,084円 |
| 120,000円 | 1,676,000円 | 6,126円 |
出典:LifeKurabe 手取り計算ツールの2026年度算出結果(確認日2026年9月1日)。控除前の所得税は91,686円、復興特別所得税2.1%を含む
12万円の控除を加えても課税所得は1,676,000円で、5%の段から出ない。課税所得が0円まで届くこともない。この範囲だから、減る額は控除額のおおむね5.105%に比例している。
同じ控除額でも、課税所得が高く、かかっている税率が高い人ほど下がる所得税は大きくなる。逆に、ここでの比例の関係は「5%の段のまま」「0円に届かない」という二つの条件の上でしか成り立たない。課税所得が段の境目に近い人や、控除で0円に届く人は、この表の割合をそのまま当てはめられない。
表の左端は申告書で計算した後の生命保険料控除額の合計であり、支払った保険料そのものではない。国税庁の生命保険料控除の説明では、一般生命保険料・介護医療保険料・個人年金保険料の区分ごとに計算した控除額の合計上限が12万円とされている。一つの契約で必ず12万円になるわけではない。
地震保険料控除は生命保険料控除と別枠で、計算方法や上限も異なる。今回の表は地震保険料控除を加算していない。
「減る所得税」と「年末調整で戻る額」は別の数字
表が出しているのは、その年の正しい所得税がいくら小さくなるかだ。年末調整の精算額は「その年の正しい所得税」と「毎月の給与から源泉徴収された額の合計」の差で決まり、後者は給与所得の源泉徴収税額表(月額表)による。手取り計算ツールにはこの表が入っていないため、還付される金額そのものは出していない。実際の還付額は、勤務先の年末調整の精算結果や給与明細で確認する。源泉徴収票の「源泉徴収税額」は年末調整後の年間の税額を示し、還付額を直接記す欄ではない。精算の仕組みは年末調整の記事で説明している。
住民税も別の動き方をする。保険料控除は住民税にも効くが、年末調整で戻るのは所得税だけで、住民税は翌年度の税額が下がる形で反映される。住民税での控除額は所得税と同じとは限らないため、この試算では住民税の減少分を計算していない。
試算の条件から外れる人
数字は条件を固定した一人分の試算で、次の点は計算に入っていない。
- 年収を全額月給として扱っている。給与と賞与では社会保険料の計算方法が異なり、月給と賞与の配分によって試算との差が生じる
- 協会けんぽの料率で計算している。組合健保や共済組合の加入者は料率が異なる
- 組合費・財形・社宅など会社ごとの控除は含まれていない
社会保険料の見積もりが変われば課税所得も動き、どの税率の段にいるかが変わることがある。自分の年収で課税所得と税率の段を確かめたい場合は、当サイトの手取り計算ツールに年収と条件を入れると、控除前の課税所得から順に出せる。