同じ市区町村で「土地だけ」の区画と「建物付き」の区画が取引されるとき、土地1㎡あたりの値段はどれだけ違うのか。国土交通省「不動産情報ライブラリ」の不動産価格情報を市区町村ごとに並べ直すと、建物付きは土地だけの1.69倍というのが真ん中の答えになる。2025年第2四半期から2026年第1四半期までの4四半期分で、どちらの種類も30件以上ある667市区町村を対象に、比(土地と建物÷土地)の中央値を取った数字だ。
ただし1.69倍は「建物のぶんが土地の0.69倍」という意味ではない。比が大きい市区町村を順に見ていくと、建物が高い街というより土地が安い街が並ぶ。逆に、建物付きのほうが土地だけより安い市区町村もあり、比の下位20はすべて1倍を下回る。
分母をそろえた二つの㎡単価
不動産価格情報の「宅地(土地と建物)」と「宅地(土地)」は、どちらも土地面積1㎡あたりで㎡単価を出す。前者は建物込みの価格を土地面積で割った数字、後者は土地の価格を土地面積で割った数字だ。分母が同じなので、同じ市区町村の二つの行は並べて比べられる。
中古マンションになると話が変わる。中古マンション等の㎡単価は専有面積が分母で、宅地の土地面積とは別物だ。47都道府県で取引が最も多い街の中古マンション中央値の円/㎡を、この記事の円/㎡と横に並べても意味はない。種類をまたいだ㎡単価の比較は成立しない。
数字はすべて中央値で、平均値ではない。並べて真ん中に来る値なので、極端に高い取引や安い取引に引きずられにくい。以下で単に㎡単価と書いたら、その市区町村の中央値を指す。
比が16倍を超える街と、1倍を切る街
比の大きい順に667市区町村を並べた上位20と、小さい順の下位20を示す。件数は括弧内で、左が土地と建物、右が土地だ。
上位20(比が大きい)
| 市区町村 | 土地と建物 / 土地(円/㎡、件数) | 比 |
|---|
| 三重県いなべ市 | 50,000(36件)/ 2,994(114件) | 16.70倍 |
| 三重県伊賀市 | 25,187(90件)/ 1,571(163件) | 16.03倍 |
| 茨城県かすみがうら市 | 45,890(32件)/ 3,010(55件) | 15.25倍 |
| 茨城県坂東市 | 63,611(58件)/ 4,242(47件) | 15.00倍 |
| 茨城県那珂市 | 72,727(47件)/ 6,581(60件) | 11.05倍 |
| 福島県本宮市 | 89,474(33件)/ 8,185(33件) | 10.93倍 |
| 沖縄県南城市 | 208,696(33件)/ 19,167(40件) | 10.89倍 |
| 千葉県大網白里市 | 61,538(121件)/ 6,603(40件) | 9.32倍 |
| 熊本県菊池郡菊陽町 | 176,190(58件)/ 21,905(54件) | 8.04倍 |
| 群馬県吾妻郡嬬恋村 | 10,936(72件)/ 1,406(37件) | 7.78倍 |
| 栃木県那須郡那須町 | 15,578(94件)/ 2,121(50件) | 7.34倍 |
| 埼玉県行田市 | 79,286(143件)/ 11,156(65件) | 7.11倍 |
| 埼玉県吉川市 | 225,000(115件)/ 32,941(35件) | 6.83倍 |
| 三重県三重郡菰野町 | 80,952(35件)/ 13,474(44件) | 6.01倍 |
| 栃木県下野市 | 122,222(78件)/ 20,606(82件) | 5.93倍 |
| 山梨県南都留郡鳴沢村 | 24,561(36件)/ 4,576(36件) | 5.37倍 |
| 熊本県菊池市 | 58,065(40件)/ 11,236(42件) | 5.17倍 |
| 栃木県大田原市 | 55,882(54件)/ 10,909(43件) | 5.12倍 |
| 千葉県八街市 | 31,333(100件)/ 6,170(61件) | 5.08倍 |
| 新潟県上越市 | 49,296(259件)/ 10,000(171件) | 4.93倍 |
出典:国土交通省「不動産情報ライブラリ」不動産価格情報(2025Q2〜2026Q1の4四半期)を当サイトが市区町村別に集計。土地面積1㎡あたりの中央値。
下位20(比が小さい、648位〜667位)
| 市区町村 | 土地と建物 / 土地(円/㎡、件数) | 比 |
|---|
| 大阪府藤井寺市 | 136,000(154件)/ 138,462(39件) | 0.98倍 |
| 新潟県燕市 | 26,023(67件)/ 26,667(81件) | 0.98倍 |
| 山口県周南市 | 50,000(162件)/ 51,429(91件) | 0.97倍 |
| 愛媛県今治市 | 28,808(146件)/ 30,019(111件) | 0.96倍 |
| 徳島県阿南市 | 32,693(62件)/ 34,286(49件) | 0.95倍 |
| 兵庫県芦屋市 | 371,429(111件)/ 393,398(30件) | 0.94倍 |
| 岡山県津山市 | 28,312(80件)/ 30,000(60件) | 0.94倍 |
| 山形県米沢市 | 17,083(67件)/ 18,458(37件) | 0.93倍 |
| 千葉県銚子市 | 7,419(85件)/ 8,095(44件) | 0.92倍 |
| 兵庫県豊岡市 | 25,000(79件)/ 27,500(40件) | 0.91倍 |
| 三重県伊勢市 | 25,789(113件)/ 28,437(116件) | 0.91倍 |
| 福岡県福岡市博多区 | 323,810(135件)/ 358,974(68件) | 0.90倍 |
| 愛媛県新居浜市 | 22,000(83件)/ 24,444(91件) | 0.90倍 |
| 広島県広島市南区 | 249,242(131件)/ 278,544(68件) | 0.89倍 |
| 千葉県香取市 | 8,994(60件)/ 10,556(42件) | 0.85倍 |
| 岐阜県土岐市 | 23,897(54件)/ 28,641(30件) | 0.83倍 |
| 新潟県新潟市西蒲区 | 17,787(50件)/ 22,314(30件) | 0.80倍 |
| 山口県宇部市 | 25,000(95件)/ 33,478(80件) | 0.75倍 |
| 香川県三豊市 | 7,610(45件)/ 10,526(56件) | 0.72倍 |
| 岐阜県多治見市 | 33,333(194件)/ 46,842(67件) | 0.71倍 |
出典:国土交通省「不動産情報ライブラリ」不動産価格情報(2025Q2〜2026Q1の4四半期)を当サイトが市区町村別に集計。土地面積1㎡あたりの中央値。
比が跳ね上がるのは土地が安いから
上位20で最初に目に入るのは、土地だけの列の安さだ。1位のいなべ市は土地だけだと2,994円/㎡、2位の伊賀市は1,571円/㎡しかない。建物付きは50,000円/㎡と25,187円/㎡で、これは下位20にいる周南市の50,000円/㎡や伊勢市の25,789円/㎡とほぼ同じ額だ。比が16倍になるのは分子が大きいからではない。分母が小さいからだ。
嬬恋村と那須町も同じ形をしている。建物付きは10,936円/㎡と15,578円/㎡で、土地だけは1,406円/㎡と2,121円/㎡だ。土地が1㎡あたり数千円の街では、土地の値段がわずかに動くだけで比は何倍も変わる。比が大きい行は、建物が高いというより土地が安いことが多い。
一方、下位20の土地だけの列は、高い街と安い街が混ざる。芦屋市は393,398円/㎡、博多区は358,974円/㎡、広島市南区は278,544円/㎡と高い。銚子市は8,095円/㎡、三豊市は10,526円/㎡と安い。分母が大きければ比は下がるが、土地の高さだけでは1倍を切る説明にならない。
比が1倍を切るとは、建物が付いた宅地のほうが、土地面積で割ると安く取引されているということだ。対象にした667市区町村のうち、少なくとも20カ所でそうなっている。
建物付きのほうが安い街をどう読むか
最下位の多治見市(667位)は、建物付きが33,333円/㎡、土地だけが46,842円/㎡で、建物が付いているほうが1㎡あたり13,509円安い。その上の三豊市(666位)は7,610円/㎡と10,526円/㎡、宇部市(665位)は25,000円/㎡と33,478円/㎡だ。どの行も両方の種類で30件以上あり、1件か2件の取引で決まった数字ではない。
なぜ建物が付くと安くなるのか。不動産価格情報はその理由を説明していない。考えられるのは、建物付きで売られる区画と更地で売られる区画が、同じ市区町村の中でも場所や広さの点で別の集団になっている可能性だ。そうであれば、建物の値打ちがマイナスだからではなく、比べている土地そのものが違うことになる。ただしこれは推測で、このデータだけでは確かめられない。
もう一つ、集計の行が市区町村全体を表していない場合がある。取引が市内の少ない地区に集まり、最多の地区の割合が高い行は、その市区町村の相場というより特定の一団の土地の値段に近い。比が極端な行ほど、この形に当てはまる可能性は高くなる。上位のいなべ市や伊賀市を「その市の相場」と読む前に、取引が市内のどこに集まっているかを思い浮かべたほうがいい。
中央値の中身は二つの調査
不動産価格情報には母集団が二つある。一つは不動産取引価格情報で、登記をもとに取引の当事者へ送るアンケートに答えた人のぶんだけが入る。もう一つは成約価格情報で、宅建業者が仲介した成約だけが入り、仲介を通らない取引は入らない。この記事の中央値は両方のレコードをまとめて計算したもので、どちらか一方の相場ではない。
内訳が片方に寄っている行は多く、集計行の過半は一方の母集団だけでできている。行ごとの内訳を見ずに比だけを取り出すと、アンケート回答者だけの数字と仲介物件だけの数字を割り算している場合がありうる。面積が8888や9999のレコードは上限帯以上を示す符号なので、㎡単価の計算からは外してある(価格そのものは件数に含む)。
件数が10件未満の行は統計値を出していない。それは「データがない」のであって、「取引がない」でも「0円」でもない。今回の667市区町村は両方で30件以上ある行に絞っているのでこの壁には当たらないが、直近の四半期は公表が進行中で、件数はまだ動く。この記事の数字は4四半期をまとめて当サイトが算出したもので、国土交通省が公表した統計そのものではない。
自分の街で見比べるときは
まず、比ではなく実額から入る。同じ市区町村の「土地と建物」と「土地」の円/㎡を横に置き、差が何円かを見る。いなべ市のように土地だけが2,994円/㎡の街では、16.70倍という比よりも、建物付きが50,000円/㎡という額のほうが暮らしの感覚に近い。
次に、比が1倍前後か1倍を切る街では、建物に値段が付いていないと決めつけない。藤井寺市の136,000円/㎡と138,462円/㎡のように差がわずかな行と、多治見市のように差が1万円/㎡を超える行を、同じ「1倍未満」でくくらない。差が大きい街ほど、なぜそうなるかをこのデータの外で確かめる価値がある。
最後に、直近の四半期の件数はまだ動く。上位と下位の順位は入れ替わりうるので、順位そのものより、「土地だけが数千円/㎡の街では比が意味を持たない」「建物付きが土地だけより安い街がある」という二つの形を覚えておくほうが長持ちする。