振り込まれる額は毎月見ているのに、額面の年収はすぐに出てこない。転職の条件を比べるときや、家賃の目安を探すときに、手元にあるのが手取りの額だけということは珍しくない。そこで使われるのが、手取りをある割合で割り戻して年収に戻すやり方だ。
この割り戻しは、年収の水準によって数十万円ずれる。当サイトが2026年度の制度で計算した年収別の一覧(東京都・30歳・扶養なし・協会けんぽ)では、手取り率は年収200万円で82.0%、1,200万円で71.3%だった。差は10.7ポイントある。手取り率とは手取りを額面の年収で割った値で、社会保険料と所得税と住民税を引いたあとに手元へ残る割合を指す。
82.0%で割り戻すと、手取り800万円は976万円になる
手取りがちょうど800万円の人が、一覧でいちばん高い82.0%を借りて割り戻したとする。8,000,000円÷0.820は9,756,097円、およそ976万円だ。きりのいい80%で割っても1,000万円にしかならない。
一覧では、年収1,000万円の手取りは7,274,305円だった。800万円には725,695円足りない。年収1,200万円の手取りが8,561,818円なので、手取り800万円に当たる年収は1,000万円と1,200万円のあいだにある。割り戻しで出た976万円も1,000万円も、下に外れている。
外れる向きは一つではない。手取り200万円の人が、いちばん低い71.3%で割り戻すと、2,000,000円÷0.713は2,805,049円で、約280万円という答えになる。一覧では年収250万円の手取りが2,041,850円で、手取り200万円はその行より下だ。280万円という答えは、250万円の行より30万円以上高い。高い率を借りれば低く出て、低い率を借りれば高く出る。
手取りの列から左へ読む
| 年収(額面) | 手取り | 手取り率 |
|---|
| 200万円 | 1,639,024円 | 82.0% |
| 250万円 | 2,041,850円 | 81.7% |
| 300万円 | 2,400,024円 | 80.0% |
| 350万円 | 2,787,269円 | 79.6% |
| 400万円 | 3,168,321円 | 79.2% |
| 450万円 | 3,547,913円 | 78.8% |
| 500万円 | 3,942,166円 | 78.8% |
| 600万円 | 4,662,028円 | 77.7% |
| 700万円 | 5,308,667円 | 75.8% |
| 800万円 | 5,947,601円 | 74.3% |
| 1,000万円 | 7,274,305円 | 72.7% |
| 1,200万円 | 8,561,818円 | 71.3% |
出典:当サイトによる2026年度の算出(東京都・30歳・扶養なし・協会けんぽ、確認日2026年9月1日)。料率と税率は協会けんぽ「令和8年度都道府県毎の保険料率」および東京支部の保険料額表、日本年金機構の厚生年金保険料額表、厚生労働省「令和8年度雇用保険料率のご案内」、国税庁タックスアンサーの所得税の税率・給与所得控除・基礎控除による。
使い方は単純で、手取りの列で自分の額に近い行を探し、左端の年収を読む。行と行のあいだに入る手取りは、前後の行で大まかな範囲をつかむにとどめる。
年収から手取りを引いた額は、200万円の行で360,976円、1,200万円の行で3,438,182円になる。この2行のあいだで、年収は6倍、引かれる額は9.5倍だ。割合が一定でないというのは、こういう開き方をしている。
率が動かない帯と、落ちる帯
一覧の中には手取り率が動かない場所もある。450万円と500万円はどちらも78.8%で、この帯にいるなら78.8%で割り戻した答えは近いところに落ちる。落ち方が大きいのは600万円から800万円で、77.7%から74.3%まで3.4ポイント下がる。
増えた分だけを見ると、率はさらに低い。年収600万円と700万円の手取りの差は646,639円で、100万円増えたうち手取りに残るのは64.7%だった。一覧の手取り率は年収全体に対する平均の割合なので、増えた分に効く割合とは別の数字になる。
算出のもとになった説明では、所得税が所得の増加につれて税率の高い区分に入ること、厚生年金などに上限があることが、年収によって割合が変わる理由に挙げられている。どの年収でどちらがどれだけ効いているかまでは、この一覧からは分けられない。
年収450万円で引かれている三つ
450万円の行を開くと、引かれる三つの大きさが違う。社会保険料の合計は669,564円で、年収に対して14.9%。健康保険料224,580円、厚生年金保険料417,240円、雇用保険料22,500円、子ども・子育て支援金5,244円の合計で、介護保険料は30歳なので0円だ。所得税は74,023円(復興特別所得税を含む)、住民税は207,500円(所得割203,500円と均等割4,000円の合計)で、これとは別に森林環境税1,000円を住民税と一緒に納める。
社会保険料は所得税の9倍を超える。所得税が小さいのは、年収4,500,000円から給与所得控除1,340,000円を引いた給与所得3,160,000円から、さらに社会保険料控除669,564円と基礎控除1,040,000円を引いて、課税所得が1,450,436円まで縮むからだ。手取りを年収に戻すときに効いているのは、税より先に引かれるこの社会保険料のほうだ。
年収4,500,000円から社会保険料669,564円、所得税74,023円、住民税207,500円、森林環境税1,000円を順に引くと3,547,913円で、一覧の手取りと一致する。森林環境税は国税で、住民税の均等割と一緒に納めるが住民税の額には含まれないため、住民税までで引き算を止めると手取りより1,000円多く見える。
この一覧が置いている前提
計算は東京都・30歳・扶養なし・協会けんぽの料率による。組合健保や共済組合の加入者は料率が違い、組合費・財形・社宅など会社ごとの控除も入っていない。手取りから年収を探す前に、自分の条件がここから外れていないかを見ておきたい。
- 年収を全額月給として扱っている。賞与には標準賞与額という別の等級と上限(健康保険は年573万円、厚生年金は月150万円)があり、賞与の比率が高い場合は標準報酬月額・標準賞与額とそれぞれの上限の組み合わせで、この単純計算と一致しないことがある。
- 標準報酬月額は本来4〜6月の平均で決まり9月から翌年8月まで適用されるが、この計算は月額から直接求めていて、昇給した月からすぐ変わる前提になっている。
- 住民税は同じ年の所得にかけている。実際には前年の所得にかかるので、前年に課税対象となる所得がなければ住民税は0円で、その分だけ手取りは一覧より多くなる(住民税は前年の所得に翌年度かかる)。
- 住民税の均等割は標準税率4,000円と森林環境税1,000円、所得割は標準税率(市町村民税6%・道府県民税4%)で計算している。横浜市や茨城県内の市町村のような超過課税の上乗せは含まず、政令指定都市は配分が違うため合計が100円違うことがある。
月の手取りから考えるなら、賞与があるかどうかで年収への換算が変わる。一覧で近い行を見つけたあとは、その前後の年収を年収から手取りを出すページに入れて、手取りが手元の額に合うところまで動かすのが確実だ。年収の側から手取りを眺めたいときは年収別の手取り早見表がある。