給与から引かれるものは社会保険料と所得税と住民税に分かれるが、年収が上がったときの増え方は三つとも違う。当サイトの2026年度の試算(東京都・30歳・扶養なし・協会けんぽ、確認日2026-09-01)で年収250万円と1,300万円を並べると、年収が5.2倍になる間に、社会保険料は353,060円から1,437,932円で4.1倍、住民税は90,000円から919,600円で10.2倍、所得税は14,090円から1,462,235円で約104倍になる。同じ明細から引かれているのに、動き方がここまで離れる。
年収に対する割合で三つを並べる
下の表は同じ試算の年額を、それぞれ年収で割った割合だ。金額そのものより、年収が上がるとどの割合が動くかを見るための並べ方になる。
| 年収 | 社会保険料 | 所得税 | 住民税 |
|---|
| 250万円 | 14.1% | 0.6% | 3.6% |
| 350万円 | 15.1% | 1.2% | 4.1% |
| 450万円 | 14.9% | 1.6% | 4.6% |
| 550万円 | 15.1% | 2.1% | 4.9% |
| 650万円 | 14.4% | 2.8% | 5.2% |
| 800万円 | 14.6% | 5.4% | 5.7% |
| 1,000万円 | 12.7% | 8.2% | 6.4% |
| 1,300万円 | 11.1% | 11.2% | 7.1% |
出典:LifeKurabe「年収から手取りを計算する」の2026年度算出(東京都・30歳・扶養なし・協会けんぽ、確認日2026-09-01)。割合は各項目の年額を年収で割り、小数第1位に丸めた。
250万円では社会保険料の割合が所得税の25倍ほどある(14.1%と0.6%)。1,300万円になると所得税の11.2%が社会保険料の11.1%を上回るが、差は0.2ポイントに届かない。この年収帯では二つが並ぶ、という読み方のほうが数字に近い。
引かれる合計は手取り率の裏返しで見える。同じ試算の手取り率は250万円で81.7%、1,300万円で70.6%。引かれる割合は18.3%から29.4%へ、11ポイント動く。
社会保険料の割合は、どこまで「変わらない」のか
出典は表の読み方として「社会保険料が年収に占める割合はほとんど変わらない」と書いている。450万円から800万円までは14.4〜15.1%に収まっていて、この説明は数字と合う。ただ1,000万円で12.7%、1,300万円で11.1%まで下がり、最も高い350万円の15.1%とは約4ポイントの開きがある。全域で変わらないとは言えない。
料率そのものは年収で変わらない。健康保険は標準報酬月額×9.85%(協会けんぽ東京都)の半分、子ども・子育て支援金は同×0.23%の半分、厚生年金の本人負担は標準報酬月額×9.15%、雇用保険は賃金×5/1000。変わるのは料率をかける相手のほうだ。厚生年金の標準報酬月額には上限650,000円(32等級、月額635,000円以上)、健康保険には上限1,390,000円(50等級、月額1,355,000円以上)があり、上限に達すればそれより上の給与は等級に反映されない。雇用保険だけは等級ではなく実際の賃金にかかる。高い年収で割合が下がることはこの構造と整合するが、出典は理由を書いていないので、ここは推測として読んでほしい。上限が年収のどのあたりに来るかは厚生年金と健康保険の上限で扱った。
所得税は年収ではなく課税所得にかかる
所得税額は「課税される所得金額×税率−控除額」で出す。課税所得は1,000円未満の端数を切り捨て、社会保険料を引いた後に決まる。年収が同じでも、先に引かれた保険料が大きければ課税所得は小さくなる。表でも650万円の2.8%から800万円の5.4%へ、年収が1.2倍になる区間で所得税の割合はほぼ倍になっている。
| 課税される所得金額 | 税率 | 控除額 |
|---|
| 1,000円〜1,949,000円 | 5% | 0円 |
| 1,950,000円〜3,299,000円 | 10% | 97,500円 |
| 3,300,000円〜6,949,000円 | 20% | 427,500円 |
| 6,950,000円〜8,999,000円 | 23% | 636,000円 |
| 9,000,000円〜17,999,000円 | 33% | 1,536,000円 |
| 18,000,000円〜39,999,000円 | 40% | 2,796,000円 |
| 40,000,000円〜 | 45% | 4,796,000円 |
出典:国税庁 タックスアンサー No.2260(2026年分、確認日2026-09-13)。このほか所得税額の2.1%が復興特別所得税として上乗せされる。
区分をまたぐこと自体は段差を作らない。税率は区分を超えた部分だけにかかるので、課税所得3,299,000円の所得税は237,280円、3,300,000円では237,382円。税率が10%から20%に変わっても、税額の差は102円にとどまる(いずれも復興特別所得税を含む)。表の税率は課税所得の全体にかかる率ではなく、境界の上に積まれた分にかかる率だ。速算式の控除額は、下の区分で低い税率だった分を後から差し引くために置かれている。
住民税だけは時間がずれる
住民税の割合は3.6%から7.1%へ動く。所得税ほど速くはない。均等割は標準税率の4,000円(道府県民税1,000円・市町村民税3,000円)で、これとは別に森林環境税1,000円が計算に入っている。所得割は標準税率(市町村民税6%・道府県民税4%)に調整控除を適用したもので、税率は区分で上がらない。だから増え方が所得税と別の形になる。
もう一つの違いは時間だ。住民税は前年の所得にかかり、6月から翌年5月に納める。今年の明細から引かれている住民税は、今年の年収では決まっていない。前年に課税対象となる所得がなければ、就職1年目の住民税は0円になる。表の住民税は同じ年の所得にかけて計算しているので、このずれは入っていない。前年所得と納付月の関係は住民税は前年の所得に翌年度かかるで追った。
この数字が置いている条件
試算は条件を固定している。自分の明細と比べるなら、次の五つで額が動く。
- 年齢:40〜64歳は介護保険料(標準報酬月額×1.62%の半分)が健康保険料に上乗せされるので、30歳の試算より引かれる額は増える。
- 勤務先の都道府県と制度:健康保険料率は都道府県で違い、組合健保や共済組合は協会けんぽと料率が異なる。
- 賞与の比率:賞与には標準賞与額という月給とは別の計算単位と上限(健康保険は年573万円、厚生年金は月150万円)がある。試算は年収を全額月給として扱うため、賞与の比率や支給回数によって実際の保険料と差が出る。差の方向は一律ではない。
- 等級の決まり方:標準報酬月額は本来4〜6月の平均から決まり、9月から翌年8月まで適用される。試算は月額から直接求めており、昇給した月からすぐ変わる前提だ。
- 住んでいる自治体:政令指定都市は住民税の配分が市民税8%・道府県民税2%で、100円未満の切り捨てを税ごとに行うため合計が100円違うことがある。横浜市や茨城県内の市町村のような超過課税は含まれていない。
組合費や財形、社宅といった会社ごとの控除も入っていない。表の割合は、条件を揃えたうえでの比較の形と受け取るのがいい。
昇給で手取りがどれだけ増えるかを知りたいときは、三つの合計の割合より、増えた分がどこにかかるかを見るほうが早い。健康保険と厚生年金の月額部分は標準報酬月額の等級が変わるまで据え置かれる一方、雇用保険料は実際の賃金に応じて動く。所得税は増えた課税所得にその区分の率でかかり、住民税は翌年度に回る。同じ「引かれる」でも、効くタイミングが揃っていない。