国土交通省の不動産情報ライブラリにある取引データを当サイトが市区町村別に集計した。中古マンション等と宅地(土地と建物)の両方が30件以上ある424市区町村のうち、宅地(土地と建物)の価格中央値のほうが低いのは71市区町村だった。残る353市区町村では、宅地(土地と建物)の中央値がマンションと同じか、それより高い。以下は「土地・建物」と略すが、用途が空欄の取引も含むため、戸建て住宅だけの集計ではない。集計期間は2025年第2四半期から2026年第1四半期までの4四半期分で、店舗や事務所、アパート一棟など住宅以外の用途とわかる取引は除いている。
土地・建物の中央値をマンションの中央値で割った比は、長崎県長崎市の0.42倍(土地・建物1,100万円、マンション2,600万円)から、埼玉県さいたま市西区の4.85倍(土地・建物3,200万円、マンション660万円)まで開く。中央値は取引価格を安い順に並べた中央の値で、件数が偶数なら中央の二つの平均を取る。同額の取引も含めて、少なくとも半分が中央値以下、少なくとも半分が中央値以上になる。比は二つの中央値どうしを割ったもので、同じ条件の物件を一つずつ比べた結果ではない。
土地・建物の中央値がマンションを下回る街
比が小さい順に上位から並べると、次のようになる。
| 市区町村 | 土地・建物/マンションの中央値 | 土地・建物÷マンション |
|---|
| 長崎県長崎市 | 1,100万円/2,600万円 | 0.42倍 |
| 山口県宇部市 | 700万円/1,500万円 | 0.47倍 |
| 島根県松江市 | 1,100万円/2,000万円 | 0.55倍 |
| 福岡県大牟田市 | 720万円/1,300万円 | 0.55倍 |
| 大阪府門真市 | 1,100万円/1,900万円 | 0.58倍 |
| 長崎県佐世保市 | 1,400万円/2,350万円 | 0.60倍 |
出典:国土交通省「不動産情報ライブラリ」不動産価格情報(2025Q2〜2026Q1)をもとに当サイトが集計。国土交通省が公表した統計ではない。
上位20を見ると、長崎市、佐世保市、大牟田市、飯塚市、北九州市門司区、同八幡東区、宇部市の7つが九州と山口県の市・区だ。これらの街では土地・建物の土地面積の中央値が160〜275㎡あり、マンションの専有面積の中央値は70〜78㎡にとどまる。広い土地付きの取引のほうが中央値は低い、という並びになっている。
大阪府の門真市(0.58倍)、大東市(0.64倍)、摂津市(0.71倍)や京都市中京区(0.71倍)は様子が違う。土地面積の中央値が60〜75㎡で、マンションの専有面積の中央値(60〜70㎡)と数字が近い。ただし土地の広さと住戸の床の広さは別のものを測っていて、数字が近くても同じ広さの住まいを比べたことにはならない。長野県軽井沢町は土地面積の中央値が665㎡と大きく、土地・建物3,700万円に対してマンションは5,900万円で、比は0.63倍だった。
比が大きい側はマンションの中央値が低い
逆に、比が大きい順の上位20では、土地・建物の中央値が1,800万〜4,300万円なのに対し、マンションの中央値は600万〜1,650万円に収まる。20のうち13市区町村は、マンションの中央値が1,000万円を下回っていた。
| 市区町村 | 土地・建物/マンションの中央値 | 土地・建物÷マンション |
|---|
| 埼玉県さいたま市西区 | 3,200万円/660万円 | 4.85倍 |
| 埼玉県狭山市 | 2,400万円/600万円 | 4.00倍 |
| 北海道千歳市 | 2,600万円/660万円 | 3.94倍 |
| 愛知県尾張旭市 | 3,400万円/950万円 | 3.58倍 |
| 埼玉県北本市 | 2,700万円/800万円 | 3.38倍 |
| 東京都東久留米市 | 4,300万円/1,500万円 | 2.87倍 |
出典:国土交通省「不動産情報ライブラリ」不動産価格情報(2025Q2〜2026Q1)をもとに当サイトが集計。国土交通省が公表した統計ではない。
上位20の内訳は、埼玉県が5、千葉県と神奈川県が2ずつ、東京都と茨城県が1ずつで、首都圏とその周辺で11を占める。愛知県も尾張旭市、江南市、豊明市、名古屋市天白区の4つが入った。マンションの中央値がなぜこれほど低いのかは、この集計からは言えない。同じ市区町村でも、両区分の取引は立地が揃っているとは限らず、比の差には立地、面積、築年数の違いが混ざる。築年数でマンション価格がどれだけ動くかは築年数別の中古マンション価格中央値で並べている。
比をうのみにしないための四つの条件
数字を自分の街に当てはめる前に、集計の作りを押さえておきたい。
- 二つの母集団が混ざっている。 不動産取引価格情報(登記をもとにした当事者アンケートで、回答した人のぶんだけ入る)と成約価格情報(宅建業者が仲介した成約で、仲介を通らない取引は入らない)をまとめて中央値を出している。どちらか一方の「相場」ではない。
- 用途がわからない取引が多い。 残した取引のうち用途が空欄の割合は、マンションで73%(101,275件/138,076件)、土地・建物で55%(87,463件/159,217件)。住宅以外を除けたのは、用途が書かれている取引の中だけだ。
- 件数が下限ぎりぎりの街がある。 千歳市のマンションは30件、大磯町は31件、飯塚市と桜井市は32件で、対象に入る下限の30件に近い。件数が少ない中央値の読み方は市区町村の不動産相場を件数と地区の偏りで読む記事で扱った。
- 取得時点で直近四半期の公表は進行中だった。 ここでいう直近は集計対象の2026年第1四半期を指す。データ取得日は2026年9月1日で、その後の追加公表は反映していない。
面積が8888や9999と記録された取引は「上限帯以上」を表す符号なので、面積の集計からは外し、価格は件数に含めている。
自分の街の数字を見るときの順番
まず、自分の街がこの424市区町村に入っているかを確かめる。入っていなければ、どちらかの件数が30件未満で比較の対象外になっている。それは「取引がない」という意味ではない。
入っていれば、比だけで判断せず、土地面積と専有面積の中央値を横に並べる。長崎市のように土地180㎡とマンション75㎡を比べている街と、中京区のように60㎡どうしの街では、同じ0.4〜0.7倍台でも意味が違う。比が4倍を超える街でも、土地・建物が高いのか、マンションが安いのかは、両方の中央値を見ないとわからない。どちらが得かは、この比からは判定できない。