兵庫県の宅地(土地)は、県内で㎡単価がもっとも高い市区町村ともっとも低い市区町村で88.1倍離れている。神戸市東灘区の470,588円/㎡と、丹波市の5,344円/㎡。県境をまたいだ比較ではない。
数字の出どころを先に置く。国土交通省「不動産情報ライブラリ」の不動産価格情報を、2025Q2から2026Q1までの4四半期分をまとめて市区町村別に集計した値だ(2026年9月1日取得)。集計に入るのは件数30件以上の市区町村だけで、そのうち県内に4つ以上そろった45都道府県で最高と最低を比べている。高知県と徳島県は4つに届かず、比較の対象外。以下の値はすべて中央値で、平均価格ではない。中央値は小さい順に並べた中央の値で、中央値以下と中央値以上の取引がそれぞれ半数以上になる。
倍率が大きい県は、高い側が高い県ではない
45都道府県のうち22県が10倍以上、13県が5倍未満だった(各県の倍率をこの集計から数えた)。東京都は40.7倍で6番目にとどまる。港区の3,803,077円/㎡は、件数30件以上の市区町村の中では45都道府県を通じてもっとも高い。それでも倍率が伸びないのは、東京都でもっとも低いあきる野市が93,333円/㎡あるからだ。倍率は上を下で割った値なので、下が下がらない県では上がどれだけ高くても大きくならない。
逆の形が三重県の36.4倍である。県内でもっとも高い桑名市が57,143円/㎡で、これは東京都の最低であるあきる野市より低い。36.4倍という値は、桑名市の57,143円/㎡を伊賀市の1,571円/㎡で割った結果で、効いているのは分母の小ささだ。群馬県の32.6倍も同じで、高崎市45,789円/㎡と吾妻郡嬬恋村1,406円/㎡の比になっている。
| 都道府県 | 県内格差 | 高い側 → 低い側(円/㎡) |
|---|
| 兵庫県 | 88.1倍 | 神戸市東灘区 470,588 → 丹波市 5,344 |
| 福岡県 | 64.9倍 | 福岡市中央区 600,000 → 行橋市 9,246 |
| 千葉県 | 49.2倍 | 市川市 263,333 → いすみ市 5,351 |
| 北海道 | 48.9倍 | 札幌市中央区 228,220 → 滝川市 4,669 |
| 埼玉県 | 46.6倍 | さいたま市浦和区 520,000 → 行田市 11,156 |
| 東京都 | 40.7倍 | 港区 3,803,077 → あきる野市 93,333 |
出典:国土交通省「不動産情報ライブラリ」の不動産価格情報をもとに市区町村別に集計(2025Q2〜2026Q1の4四半期、件数30件以上の市区町村のみ、2026年9月1日取得)。宅地(土地)の㎡単価中央値で、分母は土地面積1㎡あたり。
端と端の比であって、隣町どうしの差ではない
88.1倍は、兵庫県で最高と最低にあたる2つの市区の中央値の比にすぎない。県内のどこかからどこかへ移ったときの差でも、引っ越しで起きる典型的な差でもない。兵庫県の高い側3つは神戸市東灘区470,588円/㎡・芦屋市393,398円/㎡・西宮市342,414円/㎡で、この3つの間なら1.4倍に収まる。低い側3つは南あわじ市16,954円/㎡・西脇市9,009円/㎡・丹波市5,344円/㎡。上から3つと下から3つの間に残りの21市区町村がどう並んでいるかは、この集計の公表値からは読み取れない。
2.2倍の県は、比べた市区町村の数も少ない
もっとも開きが小さいのは富山県の2.2倍で、富山市36,905円/㎡と砺波市17,143円/㎡の比だ。
| 都道府県 | 県内格差 | 比べた市区町村数 |
|---|
| 富山県 | 2.2倍 | 7 |
| 福井県 | 2.4倍 | 5 |
| 山口県 | 2.5倍 | 8 |
| 長崎県 | 2.8倍 | 5 |
| 佐賀県 | 2.9倍 | 5 |
| 宮崎県 | 3.0倍 | 4 |
出典:国土交通省「不動産情報ライブラリ」の不動産価格情報をもとに市区町村別に集計(2025Q2〜2026Q1の4四半期、件数30件以上の市区町村のみ、2026年9月1日取得)。
倍率は「件数30件以上そろった市区町村」の中の端どうしなので、比べた数が少なければ端の値も出にくい。富山県は7、宮崎県は4で、兵庫県の27や愛知県の53とは前提が違う。件数30件に届かなかった町村がどの水準にあるかは公表されていないから、2倍台という数字を県内が均質な証拠として読むのは早い。
この集計が答えていないこと
同じ数字の中に母集団が2つ混ざっている。登記をもとにした当事者アンケートの不動産取引価格情報と、宅建業者が仲介した成約価格情報である。中央値は両方のレコードをまとめて算出しており、どちらか一方の相場を示すものではない。しかも集計行の過半は一方の母集団だけで出来ていて、内訳が0件の側がある市区町村は、その母集団を代表していない。
直近の四半期は公表が進行中で、件数が確定していない(2026年9月1日時点)。件数10件未満の市区町村は統計値そのものを出していないが、これは0円でも取引ゼロでもなく、値を出せるだけの件数がないという意味だ。地区数が少なく最多地区の割合が高い市区町村も、全体の相場ではなく特定の一団の土地の値段に近くなる。
㎡単価の分母も種類ごとに違う。宅地(土地)は土地面積1㎡あたりだが、中古マンション等は専有面積1㎡あたりになる。政令市20市の中古マンション㎡単価で出てくる倍率とこの表の倍率は、同じ「倍」でも割っているものが別だ。
住む場所を絞るときにどう使うか
県名だけで市区町村の価格差は読めない。富山県や福井県は、この集計に入った市区町村の最大・最小が2倍台に収まった。ただし対象数は少なく、件数30件未満の市区町村も含まれないため、この結果だけで「県の代表値に意味がある」とは決められない。兵庫県や福岡県の大きな倍率も、県全体の中央値が無意味だと証明するものではない。この集計は市区町村ごとの中央値を並べたもので、県全体の中央値を計算した値ではない。
順位も1つではない。兵庫県の芦屋市は価格中央値7,650万円で神戸市東灘区の4,200万円を上回るが、㎡単価中央値は393,398円/㎡で東灘区の470,588円/㎡より低い。総額で並べるか単価で並べるかで、順番が入れ替わる。
見る単位を市区町村まで落としても、その中がまだ一様とはかぎらない。同じ市区町村の価格の四分位まで下りると上下の開きが残る。候補が2つか3つに絞れた段階では、県の倍率を眺めるより、その市区町村の件数と地区数、そして2つの母集団の内訳を確かめるほうが早い。