求人票に書かれる「年収」と、源泉徴収票の「支払金額」は同じものだ。どちらも税や社会保険料を引く前の総支給額で、いわゆる額面を指す。紛らわしいのはその先にある。同じ人の同じ年でも、「給与所得」「課税所得」「手取り」と呼び方が変わるたびに金額が変わる。
年収500万円の会社員(東京都・39歳以下・扶養なし・協会けんぽ)について、2026年度の金額を当サイトの手取りツールで試算すると、給与所得は356万円、所得税の課税所得は約180万円、手取りは約394万円と出る。大きい順に並べれば額面、手取り、給与所得、課税所得だ。「所得」と名の付く二つは、どちらも手取りより小さい。
源泉徴収票の二つの欄と、その差の1,440,000円
源泉徴収票の欄で言うと、額面は「支払金額」、給与所得は「給与所得控除後の金額」にあたる。この例ではそれぞれ5,000,000円と3,560,000円で、差の1,440,000円が給与所得控除だ。会社員の必要経費にあたる控除で、領収書は要らない。
この控除の1,440,000円は、社会保険料と税で実際に引かれる額より大きい。額面と手取りの差は1,057,834円なので、給与所得の3,560,000円は手取りの3,942,166円を下回る。「所得」を振込額に近いものだと思って書類を読むと、この例では30万円以上の読み違いになる。
住宅ローンや保育料、各種の助成の判定は、額面でなく所得で見ることが多い。求人票の年収と、自治体が求める「所得」は別の欄の数字だ。
5,000,000円から引いていく二本の線
| 呼び方(源泉徴収票の欄) | 金額 | 何を引いた額か |
|---|
| 年収・額面(支払金額) | 5,000,000円 | 何も引いていない |
| 給与所得(給与所得控除後の金額) | 3,560,000円 | 額面から給与所得控除1,440,000円 |
| 課税所得(所得税の税率がかかる額) | 1,796,852円 | 給与所得から社会保険料控除723,148円と基礎控除1,040,000円 |
| 手取り | 3,942,166円 | 額面から社会保険料・所得税・住民税・森林環境税 |
出典:LifeKurabe 手取りツールの2026年度算出結果(年収500万円・東京都・39歳以下・扶養なし・協会けんぽ)。算出のもとは協会けんぽ 令和8年度保険料率と東京支部の保険料額表、日本年金機構 厚生年金保険料額表(令和8年)、厚生労働省 令和8年度雇用保険料率、国税庁 タックスアンサー No.1410・No.2260・No.1199(2026年9月14日再計算)
表の引き算は二本の線に分かれる。給与所得と課税所得は、額面から控除を順に引いていった数字だ。手取りは別の線で、額面から実際に天引きされる保険料と税を引く。
両方の線に顔を出すのが社会保険料だ。同じ723,148円が、手取りの計算では天引きとして、課税所得の計算では社会保険料控除として引かれる。保険料が増えれば、手取りが減ると同時に課税所得もその分だけ下がる。
税より大きい社会保険料の天引き
額面から引かれるものを項目ごとに並べると、次のようになる。条件は上の表と同じだ。
| 引かれるもの | 金額 | 補足 |
|---|
| 健康保険料 | 242,310円 | 協会けんぽ・東京都 |
| 介護保険料 | 0円 | 40歳未満は0円 |
| 子ども・子育て支援金 | 5,658円 | |
| 厚生年金保険料 | 450,180円 | 項目別で最大 |
| 雇用保険料 | 25,000円 | |
| 社会保険料の合計 | 723,148円 | 課税所得の計算では社会保険料控除 |
| 所得税 | 91,686円 | 基礎控除は2026年分の1,040,000円 |
| 住民税 | 242,000円 | 所得割238,000円(調整控除2,500円を引いた後)と均等割4,000円 |
| 森林環境税 | 1,000円 | 国税。住民税の均等割と一緒に納めるが、住民税の額には含まれない |
出典:LifeKurabe 手取りツールの2026年度算出結果(上の表と同じ条件)
一項目でいちばん大きいのは厚生年金保険料の450,180円で、所得税91,686円の4倍を超える。所得税と住民税を合わせても40万円に届かず、社会保険料の合計723,148円のほうがずっと大きい。介護保険料が0円なのは39歳以下の例だからで、40歳以上の場合は40歳以上の介護保険料と手取りで計算した。
税率を当てはめる相手は約180万円
所得税の税率を調べるとき、当てはめる金額は課税所得の1,796,852円で、額面の5,000,000円ではない。額面は課税所得の2倍を超えるので、額面のまま税率の表を見ると、2倍以上の金額で自分の位置を探すことになる。課税所得までに給与所得から引いているのは、この例(扶養なし)では社会保険料控除と基礎控除の二つだけだ。
住民税は基準にする年がずれる。前年の所得にかかるので、給与所得控除も前年分の表を使う。年収500万円の2026年度では住民税用の給与所得も3,560,000円で所得税用と同じ額だが、両者が一致しない年もある。どの年収でずれるかは所得税と住民税の給与所得控除の差で扱った。
試算が振込額からずれる六つの前提
この試算は制度の料率と税の計算から出したもので、実際の振込額とは次の点でずれることがある。いずれも手取りを動かす前提だ。
- 保険料のもとになる標準報酬月額は、本来4〜6月の平均から決まり、9月から翌年8月まで使われる。試算は月額から直接求めているので、昇給した月からすぐ保険料が変わる前提になっている。
- 賞与には標準賞与額という別の等級と上限(健康保険は年573万円、厚生年金は月150万円)がある。年収を全額月給として扱う計算なので、賞与の比率が高い人は保険料が多めに出る。
- 住民税は前年の所得にかかり、6月から翌年5月に納める。ここでは同じ年の所得にかけている。前年に課税対象となる所得がなければ就職1年目の住民税は原則0円だが、前年にアルバイトや前職の所得があれば課税される。
- 住民税の均等割は標準税率の4,000円、森林環境税は1,000円で計算している。横浜市や茨城県内の市町村のように超過課税を上乗せする自治体の分は入っていない。
- 保険料率は協会けんぽのもので、組合健保や共済組合の加入者は料率が異なる。
- 組合費・財形・社宅など、会社ごとの控除は含まれていない。
自分の年収で同じ四つを出すなら、当サイトの手取りツールに年収・都道府県・年齢を入れる。協会けんぽの保険料率は都道府県ごとに決まっていて、介護保険料は40歳未満なら0円なので、同じ額面でも都道府県と年齢で手取りは変わる。求人票どうしを比べるなら額面、自治体の書類なら「所得」、税率を見るなら課税所得と、場面ごとに持ち替える数字が違う。