当サイトが集計した中古マンションの価格中央値を同じ県の推計年収で割ると、47都道府県の倍率を並べた真ん中(24番目)は4.2倍になる。最も高いのは沖縄県の8.9倍、最も低いのは和歌山県の1.9倍で、東京都は8.1倍で2位に入る。この倍率は「その県で家を買える・買えない」を判定する数字とは違う。相場と賃金がどのくらい釣り合っているかを県どうしで見くらべるための目安で、実際に借りられる額は年収だけでは決まらない。
分子と分母の中身を先に押さえておく。分子は、国土交通省「不動産情報ライブラリ」の不動産価格情報をもとに、県内の中古マンション等の取引を2025年第2四半期から2026年第1四半期までの4四半期分まとめて出した価格中央値だ。取引を価格順に並べて真ん中に来る値なので、同額の取引も含めた中心を示す。平均価格とは別の数字である。分母は厚生労働省「賃金構造基本統計調査」(2023年)の推計年収で、きまって支給する現金給与額の12か月分に年間賞与その他特別給与額を足したもの。男女計・年齢計で、一般労働者・企業規模10人以上の個人の平均値にあたり、世帯年収でも中央値でもない。年収は2023年、取引は2025〜2026年と、時期もずれている。推計年収は万円単位の整数に丸めてから価格を割り、倍率は小数点以下一桁で表示した。
この価格と倍率は当サイトが集計・計算したもので、国土交通省が公表した統計ではない。価格データの取得時点では直近四半期の公表が進行中で、件数は未確定だった。以下はその取得時点の集計値であり、最新の取引を追加すると変わりうる。
上位2県は似た倍率でも、押し上げている側が違う
沖縄県は価格中央値3,500万円、推計年収392万円で8.9倍。東京都は価格中央値4,700万円、推計年収581万円で8.1倍だ。東京は価格も年収も47都道府県で最も高く、高い価格を高い年収で割ってなお8倍を超える。沖縄は価格が東京に次ぐ2番目の高さである一方、推計年収は47都道府県で4番目に低い。分子が大きく分母が小さい組み合わせが、東京を上回る倍率を生んでいる。
3位以下も、価格の高さの順とは一致しない。長野県は価格中央値2,900万円・推計年収458万円で6.3倍、鹿児島県と長崎県は6.0倍、宮崎県は5.6倍で、いずれも神奈川県の5.4倍より上にある。神奈川の価格中央値3,100万円はこれらの県より高いが、推計年収も571万円と高いため、倍率では下になる。
| 都道府県 | 倍率 | 価格中央値 / 推計年収 |
|---|
| 沖縄県 | 8.9倍 | 3,500万円 / 392万円 |
| 東京都 | 8.1倍 | 4,700万円 / 581万円 |
| 長崎県 | 6.0倍 | 2,400万円 / 402万円 |
| 神奈川県 | 5.4倍 | 3,100万円 / 571万円 |
| 千葉県 | 4.9倍 | 2,400万円 / 487万円 |
| 京都府 | 4.8倍 | 2,400万円 / 502万円 |
| 大阪府 | 4.6倍 | 2,500万円 / 546万円 |
| 愛知県 | 3.8倍 | 2,000万円 / 532万円 |
| 栃木県 | 3.2倍 | 1,700万円 / 535万円 |
| 和歌山県 | 1.9倍 | 880万円 / 473万円 |
出典:国土交通省「不動産情報ライブラリ」不動産価格情報(2025Q2〜2026Q1)を当サイトが集計、厚生労働省「賃金構造基本統計調査」(2023年)の推計年収
価格が同じ2,400万円でも、倍率は4.8倍から6.0倍まで開く
表の長崎県・千葉県・京都府は、価格中央値がどれも2,400万円だ。それでも倍率は長崎6.0倍、千葉4.9倍、京都4.8倍と分かれる。違いは分母で、推計年収は長崎402万円、千葉487万円、京都502万円。同じ価格帯の物件が取引の真ん中にあっても、その県で働く人の平均年収が低ければ倍率は上がる。
逆向きの例が栃木県だ。推計年収535万円は東京・神奈川・大阪に次ぐ4番目の高さだが、価格中央値が1,700万円にとどまり、倍率は3.2倍で42位になる。推計年収532万円の愛知県も、価格中央値2,000万円で3.8倍だった。倍率の順位は「価格の高い県」の順位とも「年収の高い県」の順位とも別物として読む必要がある。
倍率が低い県を「割安」と言い切れない理由
下位には和歌山県1.9倍(880万円)、秋田県2.4倍(965万円)、山梨県2.5倍(1,200万円)、青森県2.6倍(980万円)が並ぶ。和歌山・秋田・青森の3県は価格中央値が1,000万円を下回る。
ただ、県の中央値には、県内のどこで取引が多いか(都心部か郊外か)、専有面積、築年数の構成がそのまま入っている。倍率が低いのは、広さや築年数が同じ物件が安いからとは限らず、取引の中身が違うだけの可能性もある。取引が多い市区町村ごとの相場は47都道府県で取引が最も多い街の中古マンション中央値で見られる。
件数の差も大きい。東京都は40,096件あるのに対し、青森県84件、島根県85件、山形県88件、鳥取県95件、福井県98件は100件に届かない。どの県も当サイトが比較対象に採用した30件以上という基準は満たすが、これは統計的な誤差の小ささを保証する基準ではない。価格の元データは、登記をもとにした当事者アンケート(回答した人の分だけ入る)と、宅建業者が仲介した成約価格(仲介を通らない取引は入らない)の2種類を合わせたもので、どちらか一方だけの相場ではない。
自分の年収に置き換えて読む
表の分母は県全体の個人の平均だ。自分の年収とずれていれば、県の価格中央値を自分の年収で割り直すと目安が近くなる。これは物件価格と収入の単純な比で、生活費を差し引いた返済余力の計算ではない。共働きで2人の収入を合わせて考える場合も、この表の分母は1人分の数字だという点は変わらない。
住宅ローンの試算には、返済負担率だけでなく金利、返済期間、ほかの借入の返済額も要る。フラット35の返済負担率から借入額を逆算した記事では、条件をそろえた試算と実際の承認額を分けている。購入価額や住宅の要件、金融機関の審査もあるので、この倍率をそのまま借入上限には使えない。自己資金と諸費用、毎月残る生活費を踏まえた予算は別に考える。