住宅ローンの借入額は「年収の何倍」で語られることが多い。だが【フラット35】の利用条件に倍率という項目はない。基準の一つは、1年間の返済額が年収の何割になるかである。
この割合を総返済負担率という。年収400万円未満なら30%以下、400万円以上なら35%以下と決まっていて、境目のこの一点を越えると枠が5ポイント広がる。
返済額の枠には車のローンも入る
総返済負担率は、すべての借入の年間返済額の合計を年収で割った値だ。住宅ローンだけを見る数字ではない。自動車ローン、教育ローン、カードローンの返済も同じ合計に足される。
【フラット35】の条件には、ほかに借入期間と借入額もある。期間は15年以上で、上限は35年と「80歳から申込時の年齢を引いた年数」の短いほう。借入額は100万円以上12,000万円以下。30歳で申し込むなら80歳まで50年あるので、35年のほうが上限として効く。
申込時の年齢が上がると、どちらが効くかは入れ替わる。46歳を過ぎると80歳までが35年を切り、期間のほうが先に頭打ちになる。同じ毎月の返済額から逆算しても、期間が短ければ借りられる元金は下の表より小さくなる。
年収別に見た返済負担率からの試算額
次の表は、新機構団信付き、融資率9割以下、借入期間21〜35年における2026年10月の最頻金利3.83%を使い、元利均等返済、申込時30歳、返済期間35年、ほかの借入なしとして逆算した試算額だ。
実際の借入額は購入価額以内という利用条件があり、融資率が9割を超える場合や団信の条件が異なる場合は適用金利も変わる。購入価額、自己資金、住宅の要件、金融機関などの審査結果を反映した承認額ではない。
| 年収 | 返済負担率上の月額枠 | 逆算した試算額 |
|---|
| 300万円 | 75,000円 | 1,733万円 |
| 399万円 | 99,750円 | 2,305万円 |
| 400万円 | 116,667円 | 2,696万円 |
| 500万円 | 145,833円 | 3,370万円 |
| 600万円 | 175,000円 | 4,044万円 |
| 700万円 | 204,167円 | 4,719万円 |
| 800万円 | 233,333円 | 5,393万円 |
| 1,000万円 | 291,667円 | 6,741万円 |
出典:住宅金融支援機構【フラット35】ご利用条件および金利情報をもとに当サイトで算出(確認日2026年10月2日)。新機構団信付き・融資率9割以下・借入期間21〜35年の最頻金利を使用し、1万円未満は切り捨て。実際の承認額ではない。
表の月額枠は、年収と返済負担率だけを当てはめた値だ。年収500万円なら35%で年1,750,000円、12で割って145,833円。3,370万円は、その返済額を金利3.83%・35年で逆算した元金の試算である。
冒頭の倍率に戻ると、同じ返済負担率・金利・期間を使う限り、表の試算額を年収で割った比率は年収帯ごとにほぼ一定になる。年収400万円未満では返済負担率30%、400万円以上では35%が効くため、境目を挟んで比率が変わる。倍率の正体は、返済負担率と金利と期間の組み合わせだ。金利や期間の条件が変われば比率も動く。
年収1万円の差が391万円になる場所
年収399万円の試算額は2,305万円。400万円では2,696万円になる。年収の差は1万円、試算額の差は391万円(どちらも1万円未満を切り捨てた表示での差)。返済負担率が30%から35%に切り替わるからである。
ボーナスや残業代で年収が399万円台に着地するか400万円台に乗るかは、年収の額としてはわずかな違いにしかならない。返済負担率から逆算した試算では391万円の段差になる。
毎月20,000円の車のローンで試算額が462万円下がる
年収500万円でほかの借入がなければ試算額は3,370万円。ここに毎月20,000円の自動車ローンが1本あると、試算額は2,908万円になる。462万円の減少だ。
年240,000円の返済が462万円を削るのは、返済負担率の枠のうちその分が住宅ローンに使えなくなり、住宅ローン側では35年分の返済額として効くからである。月20,000円という額だけを見れば小さいが、それが35年ぶんの元金に換算されるところで、削られ方は月額の印象より大きくなる。
金利が1%違うと418万円小さくなる
同じ年収500万円・借入なしの条件で、金利3.83%の試算額は3,370万円、金利4.83%なら2,952万円。返済負担率の枠は同じでも、利息に回る分が増えるぶん、借りられる元金が減る。
上の表は、2026年10月の【フラット35】の金利のうち低いほうの端で計算している。同じ月に5.84%まで幅があることを考えると、この表は示した金利幅の中では試算額が大きく出る側にある。
試算額は承認額でも借りてよい額でもない
返済負担率から逆算できるのは、この基準だけを当てはめた返済額の枠と元金の試算だ。購入価額や自己資金、住宅の要件、金融機関などの審査によって、希望額どおりに借りられない場合がある。生活費、教育費、固定資産税、住宅の修繕費を払ったあとに返していけるかどうかも、この試算では判定されない。年収500万円で3,370万円を借りるなら、月145,833円を35年間払い続ける計算になる。
試算額を知ったあとに必要になるのは、その数字だけでなく、買おうとしている地域で実際にいくらの物件が動いているかを見ることだ。都道府県別・取引が最も多い街の中古マンション中央値のような実勢の価格帯と並べて、試算額に対してどのあたりに収まるかを見たほうが早い。
自分の年収・自己資金・年齢で計算したい場合は、当サイトの住宅予算ツールで返済負担率からの試算額を出し、その市区町村で実際に取引された価格帯と見くらべられる。