年収が1.2万円上がったのに、手取りは33,051円減る。当サイトの手取り試算(2026年度、東京都の料率、39歳以下、扶養なし)では、年収508.8万円から510万円へ昇給したところでこれが起きる。年収120万円から1600万円まで1.2万円刻みで見ていくと、同じように標準報酬月額の等級で手取りが減る境界は42カ所あった。これとは別に、所得税の基礎控除が段階的に下がることで手取りが減る境界が2カ所ある(後述)。
42カ所の原因は所得税ではない。社会保険料が給与そのものではなく、給与を段階に区切った「標準報酬月額」にかかるからだ。段階の境目をまたぐと、給与の増え方より保険料の増え方が大きくなることがある。境目の少し手前で小さく昇給した人が、この段差を踏む。
月給1,000円の差で標準報酬月額は3万円上がる
最大の境界の内訳から見る。年収508.8万円と510万円の差は12,000円で、12で割れば月給1,000円の差だ。この1,000円で、健康保険と厚生年金の標準報酬月額はどちらも410,000円から440,000円へ上がる。保険料は標準報酬月額を基準に決まるので、月給が1,000円しか増えていなくても、保険料は3万円分の段を一つ上がった額になる。等級と保険料の対応は、協会けんぽ東京支部の令和8年3月分(4月納付分)からの保険料額表と、日本年金機構の令和8年の厚生年金保険料額表によるものだ。
| 項目 | 年収510万円のとき | 508.8万円との差 |
|---|
| 標準報酬月額(健康保険・厚生年金) | 440,000円 | +30,000円 |
| 健康保険料(年額) | 260,040円 | +17,730円 |
| 厚生年金保険料(年額) | 483,120円 | +32,940円 |
| 子ども・子育て支援金(年額) | 6,072円 | +414円 |
| 所得税 | 93,166円 | −2,093円 |
| 住民税 | 245,000円 | −4,000円 |
| 手取り | 3,986,102円 | −33,051円 |
出典:LifeKurabe の2026年度手取り試算(東京都・39歳以下・扶養なし、協会けんぽ料率)。2026年9月14日再計算。
健康保険料と厚生年金保険料を合わせると、年50,670円の増加になる。所得税と住民税はどちらも減っているが、これは社会保険料控除が増えて課税される所得が小さくなるためで、減り分は合わせても6,093円にとどまる。差し引きで、年収が12,000円増えても手取りは33,051円減る。
減り幅の大きい10件は年収474万〜762万円に並ぶ
基礎控除による2カ所も含めた44カ所のうち、減り幅の大きい上位10件を年収の順に並べ直した。
| 境界をまたいだ後の年収 | 1.2万円の昇給で減る手取り | 原因 |
|---|
| 474万円 | 33,050円 | 標準報酬月額 |
| 510万円 | 33,051円 | 標準報酬月額 |
| 546万円 | 30,957円 | 標準報酬月額 |
| 582万円 | 30,756円 | 標準報酬月額 |
| 618万円 | 30,756円 | 標準報酬月額 |
| 654万円 | 30,756円 | 標準報酬月額 |
| 666万円 | 28,060円 | 所得税の基礎控除 |
| 690万円 | 26,771円 | 標準報酬月額 |
| 726万円 | 26,672円 | 標準報酬月額 |
| 762万円 | 26,976円 | 標準報酬月額 |
出典:LifeKurabe の2026年度手取り試算(2026年9月14日再計算)。年収120万〜1600万円を1.2万円刻みで確認し、手取りが減る44カ所から減り幅の大きい10件を抜き出した。年収は内訳の例に合わせ、境界をまたいだ後の値で示す。
666万円を除く9件は、474万円から762万円まで36万円おきに並ぶ。月給にすると3万円で、最大の境界で標準報酬月額が上がった幅と同じだ。減り幅は474万〜654万円の6件が3万円台、690万〜762万円の3件が2.6万円台で、年収が高いほど減り幅が大きい、という並びにはなっていない。666万円の1件だけは等級ではなく、所得税の基礎控除が下がる境目にあたる。
上位10件で最も高い年収は762万円で、それより上の境界は入っていない。健康保険の等級は50段階、厚生年金の等級は32段階で上限が違い、厚生年金は上限に達するとそれ以上増えない。この帯の年収が全国でどのあたりに当たるかは、都道府県別の平均年収を並べた記事と合わせて読むと位置がつかめる。
所得税の累進とは別の仕組み
年収が上がると税率の区分が変わる所得税と混同しやすいが、これは別の話だ。所得税の税率は境目を超えた分だけに高い率がかかるので、税率の区分をまたいだ瞬間に手取りが減ることはない。等級の境界で手取りが減るのは、保険料が段階でまとめて上がるからだ。最大の境界の内訳でも所得税と住民税は減っており、手取りを押し下げているのは保険料と支援金だけになる。
ただし所得税にも、税率とは別に段差がある。2026年分の基礎控除は合計所得金額で段階的に決まり、489万円を超えると104万円から67万円に、655万円を超えると62万円に下がる(国税庁 No.1199)。控除が段で減るぶん所得税がまとめて増えるので、年収666万円と850.8万円の境界では、保険料の等級が変わらなくても手取りが減る。666万円の境界では、年収が1.2万円増えると所得税が38,900円増え、手取りは28,060円減る。
試算と実際の計算が違う点
数字は東京都・39歳以下・扶養なし・協会けんぽの料率という条件で出したものだ。実際の給与計算では試算と扱いが違う点があり、当てはまる人は境界の位置や減り幅が変わる。
標準報酬月額は本来4〜6月の給与の平均から決まり、9月から翌年8月まで適用される。試算は月額から直接求めているので、昇給した月からすぐ変わる前提になっている。賞与には標準賞与額という別の等級と上限があり、上限は健康保険が年573万円、厚生年金が月150万円だ。年収を全額月給として扱う試算では、賞与の比率が高い人は保険料を多めに見積もることになる。
住民税は前年の所得にかかり、6月から翌年5月に納める。試算では同じ年の所得にかけている。前年に課税対象となる所得がなければ就職1年目の住民税は原則0円だが、前年にアルバイトや前職の所得があれば課税される。住民税の均等割は標準税率の4,000円、森林環境税は1,000円で計算しており、横浜市や茨城県内の市町村のように超過課税を上乗せする自治体は含まれていない。
料率は協会けんぽのもので、健康保険料率は都道府県ごとに決まり、令和8年度分が公表されている。組合健保や共済組合の加入者は料率が異なる。東京都以外の料率が適用される人は、境界の減り幅が表とは違う額になると考えられる。組合費・財形・社宅など、会社ごとの控除も試算には含まれていない。
自分の年収で見るとき
年収が表の境界の少し手前にあり、昇給が月1,000円程度なら、その年は手取りが減ることがある。減るのは境界をまたぐ1回分で、境界と境界の間では年収が1.2万円増えても手取りは減らない。44カ所は1.2万円刻みで確認したときに減った点を数えたもので、刻みの大半では手取りは減っていない。
手取りが減った月があれば、給与明細の健康保険料と厚生年金保険料の欄を前月と比べる。保険料が段で上がっていれば、標準報酬月額の等級が変わった月だ。実際の等級は4〜6月の給与をもとに9月から変わるので、昇給した月にすぐ反映されるとは限らない。
賞与の比率が高い人、東京都以外の料率が適用される人、組合健保の人は、表の数字がそのまま当てはまらない。年収を月給と賞与に分けて見ると、保険料の増え方は表より小さくなることがある。