「きまって支給する現金給与額」から「所定内給与額」を引くと、月給のうち所定内を超えて支払われた分が残る。2023年の賃金構造基本統計調査(厚生労働省)で、この差額が所定内給与額の何%に当たるかを県別に見ると、47都道府県の単純平均は9.0%だった。最も高い三重県は11.1%、最も低い秋田県は6.6%。数字はいずれも一般労働者・企業規模10人以上・産業計、男女計・年齢計の月額で、税や社会保険料を引く前の額面の平均値である。県の区分が勤務先の所在地と住んでいる場所のどちらに基づくかは、出典に示された範囲では分からない。
出典はこの差額について、「この差額は所定外(残業・休日)給与を含むが、統計の定義上それだけとは限らない」と注記している。残業代そのものの金額ではない。だから以下では残業代と言い換えず、差額と呼ぶ。
三重11.1%と秋田6.6%、上下で4.5ポイント
| 都道府県 | 比率 | 差額(月額) |
|---|
| 三重県(1位) | 11.1% | 3.4万円 |
| 愛知県(2位) | 10.9% | 3.5万円 |
| 香川県(3位) | 10.3% | 2.9万円 |
| 宮城県(4位) | 10.2% | 3.0万円 |
| 群馬県(5位) | 10.1% | 3.0万円 |
| 鹿児島県(44位) | 7.5% | 2.0万円 |
| 宮崎県(45位) | 7.2% | 1.8万円 |
| 鳥取県(46位) | 6.7% | 1.7万円 |
| 秋田県(47位) | 6.6% | 1.7万円 |
出典:賃金構造基本統計調査(厚生労働省)「令和2年以降 一般_都道府県別_年齢階級別DB」2023年。比率は(きまって支給する現金給与額−所定内給与額)÷所定内給与額
1位と47位の開きは4.5ポイント。上位に入った5県の比率は10.1%から11.1%の範囲に収まり、下位5県は6.6%から7.5%の範囲にある。県ごとの比率がこの1ポイント前後の幅に密集しているため、順位そのものより「10%前後の県か、7%前後の県か」という括りで見たほうが実態に近い。
平均の9.0%は、47都道府県を1件ずつ等しく数えて割った値である。労働者の多い県に重みを置いた全国の比率は、出典に示された数字には出てこない。9.0%は県別比率の算術平均であり、順位の中央にある県の比率(中央値)ではない。日本の平均的な働き手の比率として読むこともできない。
差額の大きさと比率の順位はそろわない
東京都のきまって支給する現金給与額は39.7万円で、47都道府県のうち最も高い。差額の2.9万円も、全順位の一覧で同額の県を拾うと大阪府や静岡県と並ぶ水準にある。それでも比率は7.7%で40位にとどまる。所定内給与額が36.9万円と大きく、その所定内が比率の分母になるからだ。
| 都道府県 | 所定内給与額 | 比率(順位) |
|---|
| 東京都 | 36.9万円 | 7.7%(40位) |
| 神奈川県 | 35.0万円 | 9.6%(12位) |
| 大阪府 | 34.0万円 | 8.6%(32位) |
| 愛知県 | 32.2万円 | 10.9%(2位) |
| 秋田県 | 26.1万円 | 6.6%(47位) |
出典:同上
この5県の並びでは、所定内の水準と比率の順位が対応していない。神奈川県は所定内35.0万円で東京都に次ぐ高さだが比率は12位、大阪府は34.0万円で32位、愛知県は32.2万円で2位に入る。月給の総額が高い県ほど所定内を超える分の割合も大きい、という関係はここからは出てこない。
金額のほうで比べると、愛知県の差額3.5万円は秋田県の1.7万円の約2倍になる。ただしこれは両県の一般労働者(企業規模10人以上・産業計)の平均値どうしの比較で、同じ職種や同じ働き方の人を突き合わせた差ではない。
残業代と読み替える前に確かめること
出典が示すのは金額だけで、労働時間の数字は含まれていない。そのため、比率の県差が実際の残業時間の差なのか、割増率や手当の構成の違いなのかは、この数字では分けられない。所定外給与以外に何がこの差額に含まれるのかも、注記は具体的に挙げていない。県ごとの産業の構成が効いている可能性はあるが、それは推測であって、出典からは確かめられない。
表示の丸めもある。東京都はきまって支給39.7万円から所定内36.9万円を引くと2.8万円だが、差額は2.9万円と示されている。万円表示が小数第1位で丸められているためと見られる。0.1万円のずれは、所定内36.9万円を分母にすると比率で約0.3ポイントに相当する。表示値の丸めだけから、県別順位がどれだけ入れ替わるかは確定できない。
自分の明細に当てるとき
ここまでの金額はすべて平均値で、中央値ではない。高い人が平均を引き上げるので、「半分の人がこの水準」という読み方はできない。自分の給与明細で毎月ほぼ変わらない部分と月ごとに増減する部分を分けて比率を出せば同じ形の数字にはなるが、統計の「所定内給与額」の区分と手元の項目名が一致するとは限らない。
集計に入っていない働き方もある。企業規模10人以上が対象なので、それより小さい企業は含まれない。一般労働者の集計であり、この区分にどの雇用形態までが入るかは、出典に示された範囲では確認できない。
月額の内訳の話なので、賞与まで含めた年収の姿はこの表からは判断できない。
比率だけを見て県を並べると分母が隠れる。差額の万円と所定内の万円を、必ず一緒に見る。